プロジェクト概要

本プロジェクトは「門川町と宮崎大学の連携プロジェクト」の一環として採択された

■背景

1.宮崎には多くの魅力的な観光資源があるにも関わらず、情報の発信不足により利益を損失しているといわれる。

2.1の例として、宮崎県東臼杵郡門川町には現在、インバウンド旅行客はほぼ皆無である。在住の外国人は、門川町の小中学校の英語ALTの先生1名のみである。また門川湾は熱帯域・冷帯域双方の魚類が漁獲される特異的な場所であるにも関わらず、その情報をうまく発信するためのシステムが整っておらず、研究者の来訪も少ない。

3.今の地方創生の現状として、マーケティング的開発が弱点となっている。つまり供給者が提供したいもの・提供できるものをいかに消費者に消費してもらえるかを追求するという風潮があり、消費者のニーズに合ったものを提供するという視点が欠如している。

 

■目的

1.宮崎県日南市でのインバウンド旅行客の実態調査をもとに構築した「インバウンド旅行客を呼び込むための総合パッケージモデル」が異なる地域、地域資源にも応用できるかを検証し、モデルをより一般化する。

2.1の実証研究の際、インバウンド旅行客への英語でのヒアリング調査や、情報発信のためのホームページ作成の方法、ICT利活用法、データ集計の方法などを高校生にレクチャー・体験してもらい、高大連携を通した人材育成を図る。

3.1、2の研究で得られた結果から、総合パッケージモデルの改善や、高大連携事業から得られる考察・理論を集約し、論文にする。

 

■必要性・重要性

宮崎県門川町では、環境省レッドリストでは絶滅危惧のレベルがアホウドリと等しいとされているカンムリウミスズメや豊富な海産物、海洋域遺伝資源などの手付かずの魅力的な観光資源があるにもかかわらず、うまく情報発信が行われていないためにインバウンド旅行客が訪問していない。そのため、門川町において日南市での実態調査から構築した総合パッケージモデルを実証していき、インバウンド旅行客の増加を図る。またそこで得られた結果、考察、理論をもとに、モデルの改良を行っていく。

日南市で構築したモデルでは、ICTを活用した地域資源の情報発信だけでなく、その情報を得て来日するインバウンド旅行客が、現地で消費行動をとることを想定し、受け入れ体制もモデルに組み込んでいることで、持続的にインバウンド旅行客を増加させることが期待されることがこのモデルの魅力の一つである。門川町での実証研究を行うことで、このモデルを多くの地域や地域資源で活用できる、より一般化されたモデルにすることができると考えられる。

さらに、本研究は高大連携も視野に入れており、研究を進める過程で、ICTを活用したグローバルな情報発信ができる人材を育てることで、このモデルを実証し、未来へとつなぐための地元の人材を育てることができる。

 

■準備状況

1.平成28年9月29日(木)に、宮崎県門川町を訪問し、宮崎県門川町役場 まちづくり推進課や株式会社水永水産、松野工業株式会社、門川漁業協同組合、門川漁協直営海遊物産館「うみすずめ」、宮崎大学農学部付属フィールド科学教育研究センターなどの方々とお会いし、本研究の概要を説明し、提案や意見を収集した。

2.宮崎県門川町の代表的な地域資源として挙げられる「カンムリウミスズメ」や「海洋生物多様性」、「海洋遺伝資源」、「海産物」について調査・情報整理を行った。

 

■プロジェクト実施体制

1.日南市の調査研究から構築したパッケージモデルを、異なる地域、地域資源にも応用できるかを検証するため、門川町にてモデルの実証を行う。

2.実証研究の際に、門川町でこのモデルを持続的に実行していくことのできる人材を育成するために、門川町の高校生に、英語でのヒアリング調査やICTを使った情報発信など、実証研究の一部に参加してもらい、スキルを身につけてもらう。

 

 

■具体的な実施計画・内容・方法

1.モデルの要素である「情報発信」の強化を目的として、門川町の代表的な地域資源(海産物や海洋遺伝資源)の魅力を発信できるホームページや、ホームページとリンクさせたFacebookページやTwitter、InstagramなどのWEBサイトのページを作成し、それらをGoogle Analyticsにより分析する。

2.モデルの要素である「受け入れ体制」の強化を目的として、門川町にて、日南市の研究により構築した受け入れ体制のコンテンツを実証する中で外国人にヒアリング調査を行い、コンテンツの改良を行う。また、日向市のインバウンド旅行客に門川町の認知度やイメージ、知っている情報・知りたい情報などについてヒアリング調査を行う。

3.1、2で得られた結果からパッケージモデルの再構築を行い、得られる考察をもとに論文を作成する。

 

■期待される効果・成果

1.日南市で構築した総合パッケージモデルを実証していく過程で、モデルを一般化していくための新しい課題が見えてくることが予想される。その課題をもとに改良型モデルを再構築し、前回のモデルと比較し、より一般化したものにすることができる。また、門川町に隣接している日向市には日南市同様、クルーズ船が寄港するため、多くのインバウンド旅行客が来ている。そのためモデル実証により門川町の魅力を発信し、受け入れ体制を強化することで、門川町にもインバウンド旅行客の増加をもたらすことが期待される。

2.高校生に研究の一部を体験してもらうことで、ICTや地域について新しい知識を得ることができ、同時に英語力、ICT駆使力、コミュニケーション能力、課題解決能力を育てることができ、門川町においてこのモデル実行を持続的に行うための人材を育成できることが予想される。

 

■到達目標

日南市の調査で構築したインバウンド旅行客のための総合パッケージモデルを門川町において検証し、モデルが他の地域や地域資源でも通用する可能性があるか、それが厳しいようであれば、モデルの欠陥点は何か、どのような改良を加えるべきであるかについて考察し、実証していく。

門川町の代表的な海産物、遺伝資源などを例としてホームページやSNSを利用した情報発信を行い、Google Analyticsにより制作サイトを分析し、結果をもとにサイトの改良を行っていく。これと同時に、日南市の実証研究の際に行った受け入れ体制モデルを門川町で実証し、外国人にヒアリング調査を行い、より良い受け入れ体制の構築を行う。

 

■担当教員

・宮崎大学地域資源学部准教授 金岡保之

 

(2017-18年度 門川町との連携プロジェクト計画表より抜粋)